株式週間展望=GW後相場に波乱の種―政治イベント続々、仏大統領選はテールリスク、無事通過なら株高へ

 ゴールデンウイーク(GW)に入る翌週(5月1、2日)および翌々週(同8-12日)は、海外でフランス大統領選の決選投票(7日)と韓国大統領選(9日)といった政治イベントが控え、11日にはG7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)も開かれる(13日まで)。一時の様子見ムードからやや明るさを取り戻した株式市場だが、依然として波乱の種を抱える点には注意が必要だ。

 今週(4月24-28日)の日経平均株価は、前週比575円高の1万9196円と上昇した。仏大統領選の第1回投票(23日)で、世論調査通り中道系候補のマクロン前経済相が得票率1位となったことにより、マーケットの警戒が緩んだ格好。また、朝鮮半島情勢にも動きがなく、リスク回避姿勢が後退した。

 ただ、為替の水準を踏まえ、市場関係者の間で日本株の先高感は以前ほど強くない。「セル・イン・メイ」(5月に売れ)の相場格言も踏まえると、昨年末以降の上値のフシである1万9600円台のゾーンを突破するのはまだ難しそうだ。

 トランプ米大統領が直近示した税制改革方針には、財源の不透明さが指摘される。このため、株価を底上げする要素としてはいまひとつ力を欠く。こうしたなか、ピークを迎える国内企業の3月期決算の内容をにらみつつ、2日までの日経平均は1万9000円台前半でのもみ合いが続きそうだ。

 8日以降の展開は、仏大統領選の結果次第だろう。マクロン氏が想定通りに勝利した場合は、第1回投票時にみられたようなリスクオンの動きにつながる可能性がある。極端な円安が進めば、従来と比べて縮小した企業業績の改善期待が再び膨らみ、日経平均が2万円に迫る値運びも想定される。

 一方、マクロン氏とともに決選ステージに進んだ極右政党・国民戦線のルペン党首が逆転勝利するようなことになれば、逆に一気にリスクオフに傾く。反EU(欧州連合)を掲げているだけに、昨年のブレグジット(英国のEU離脱)に似たショック安に見舞われる恐れがある。ただ、現時点ではルペン氏勝利は「テールリスク」と位置付け、日経平均の想定レンジは1万8800-1万9700円とする。

 韓国の大統領選は、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏が世論調査の支持率で、野党第2党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)氏以下を引き離している。文氏は北朝鮮政策に寛容的とされ、下馬評通りの結果となれば、半島情勢リスクはさらに後退する公算。ただその半面、厳しい対日姿勢も想定される。

 このほか、米国では2、3日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、5日に4月雇用統計、欧州では3日に1-3月期GDP(国内総生産)が出る。国内の決算発表については、社数ベースでは5月12日がヤマ場。トヨタ自動車 <7203> は10日の発表を予定している。参考銘柄は三井化学 <4183> やKYB <7242> 、ブリヂストン <5108> 。



国内株式市場見通し
:連休谷間は基本閑散だが、連休明け後は業績相場が本格化

先週の日経平均は上昇。目先のリスク要因を一つずつクリアするごとに、リバウンド基調が強まる格好となり、一時3月24日以来、約1ヵ月ぶりの水準を回復した。注目されていた23日の仏大統領選第1回投票結果は、EUの枠組みの堅持を前面に掲げるマクロン氏が決選投票に進むことが確実となり、リスクオンの流れから為替市場では安全な資産としてこれまで買われてきた円を売る動きが強まり、円相場はドルやユーロに対し大きく値下がりした。朝鮮人民軍創軍85周年を迎えた北朝鮮では、緊張が続くものの一先ず核実験や弾道ミサイル発射などの動きがみられなかったこともあり、次第に地政学リスクへの警戒が和らぐ格好。その後も米国の税制改革案への期待のほか、28日に期限を迎える暫定予算にむけてメキシコ国境の壁建設費の予算計上を先送りにしたこと等が材料視された。週末こそ暫定予算の行方を見極めたいほか、国内では決算発表の第1弾ピークとなったこと、さらに大型連休を前に積極的な売買は手控えられたが、下値の堅さが意識されていた。

今週は連休の谷間で5月1日、2日の2日間の取引となる。まずは28日の米国の暫定予算期限の行方は、米上下両院5日を期限とする1週間のつなぎ予算を可決。短期のつなぎ予算でひとまず政府閉鎖を回避した一先ず通過材料となることから、2日間の商いとはいえ、トレンドが強まる可能性がありそうだ。また、連休中2、3日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれるほか、5日に4月の米雇用統計が発表され、同日にFRBのイエレン議長が講演する。先高期待が高まる可能性があり、わずか2日間ではあるが、海外勢のリスクオンの流れが強まるようだと、日本の週後半の休日分を前倒しで資金が流入する思惑も高まりそうである。

 しかし、北朝鮮情勢については、29日朝方、北朝鮮が弾道ミサイル1発を発射したと伝えられた。北朝鮮内陸部に落下したと推定されることから、失敗に終わったようだが、緊張がくすぶる中では積極的なポジションは取りづらい面はある。そのため、基本的には商いは膨らみづらく、1日、2日については決算発表も少ないため、第1弾のピークとなった28日発表分の決算結果を手掛かりとした物色に短期資金が集中することになろう。また、7日にフランス大統領選挙の決選投票が行われるほか、9日には韓国大統領選挙が行われる。フランス大統領選については、市場はマクロン氏の勝利を織り込んでいるとみられる。マクロン氏とルペン氏の2人の候補にとっては、1回目の投票でそれぞれ20%前後を得票した中道右派のフィヨン氏と急進左派のメランション氏に投票した有権者をいかに取り込んでいくかが勝敗のカギとなっている。こうした中、メランション氏の支持母体は、「民主的ではないルペン氏に投票するという選択肢はない」と述べており、マクロン氏有利の見方は換わらないだろう。そのため、サプライズはなさそうだ。

連休明け後はこれら要因が通過していることから、改めて先高期待が高まる可能性がありそうだ。4月第3週(17-21日)の投資部門別売買動向では、海外投資家が現物・先物合算では売り越しだったが、現物としては3週連続の買い越しとなった。先週の上昇局面では景気敏感セクターの強さが目立っていたこともあり、日本株に対する買い越し基調への転換が期待されることから、需給面での下支えとして意識されそうだ。また、連休明け後の5月2週は、決算発表のピークを迎え、8日から12日までに1950社超の企業決算が予定されている。ソフバンクG<9984>、トヨタ<7203>、日産自<7201>、KDDI<9433>など主力処の決算が集中するが、足元での決算では概ね良好な結果が目立っている。低迷するトヨタ辺りがアク抜けとなれば、投資家のセンチメントの改善につながろう。また、決算、決算説明会を経て、自社株等の株主対策を発表する企業などには、短期筋の資金が集中することになりそうだ。